最終更新 2024.9.30


55 女優


 この場所に来る時刻がもう少し早かったなら、雨の後の雲の隙間から光が舞い降りて、二人を隔てる透明の壁の存在にそれはどこまでも高く広がっている事に気がついたはず。フラリとやって来た音楽は、控え目な顔をして跳ね返り素敵な楽曲を今から奏でる。通路よりも広く、広間というには狭い、歩行者天国までは距離がとどかない専用通路の赤褐色の石畳はその感情を抑えきれない。時の精霊達によって形作られた微小な段差は、制されるように往来に踏みつけられている。両サイドのガス灯はマイペースで役割を演じていた。灯下にはカフェやレストランが映し出され、屋外テーブル席では大勢の人々が談笑したり食事をしている。


ユキ 「あそこに座ろうよ」


 ユキはケイゴに喋りかけながら足早に、簡易な仕切りで区切られた屋外テーブルの一席の手前から「ここ」と手で合図している。ユキの所までケイゴがすぐに追いついて…


ユキ  「何注文す…」

ケイゴ 「今度さ」

ユキ  「?」

ケイゴ 「一緒に映画を観に行こうよ」

ユキ  「うん、いいけど…、あ、」



  ユキは前髪が眉毛の下で両目まではかからずその中間辺りで揃えている、若干茶色がかっているセミロングストレートのヘアスタイルで、その毛先は可愛らしく両肩側へ向けてハネていた。服装は、ライトグレー色系統で特に柄も無いキャミワンピースを着ており、サンダルを履いている。

 承諾の後ユキはケイゴの方を見つめていた。赤色が強めの口紅が唇に塗られていて周囲と共に闇に堕ちるのを拒むかのように明るく、その潤いは未だ発せられぬ続きの言葉を待つケイゴをもどかしくする。


ケイゴ 「(ホント可愛い子だよな…)」



 (ここで、見つめているユキの目を強調して。数秒間)


 彼女は映画の女優には向いていないかもしれない。だって表情が乏しいから。




54 枕営業


 数年前…

多田のヤクザ組織の上役
「受けそうだったら枕やらせて。追い込み過ぎて(周囲に)喚き散らしたりさすなよ」


 アイドル伊藤稀衣Iは心神喪失の状態下で、「それだけはやめて欲しい表に出さないで欲しい」と追い詰められる形で枕営業を受けるのだった…。


 多田と稀衣、二人車で移動中。多田が運転。

 

多田
「意外と紳士的だからさ。滅茶苦茶とか乱暴な事絶対無い。俺が保証する」

稀衣 「…」

多田 「挨拶はしてね」


 高級ホテルの一室で

枕営業相手の某会社社長 「ああ、どうも、こんにちは」

稀衣 「え、…はい」


 寝室はガラス張りで外から丸見え。内装やベッドは高級感が溢れている。

 社長は少年のような瞳を輝かせて興奮気味である。 


社長 「ホントに嬉しいんだけど。今日会えて(社長66歳 談)。凄いファンだったんだよな」

稀衣 「あれは?」

社長 「ああ、見学だって」


 ガラス張りの部屋の外には、いつの間にやら、小学生程度の年齢の女児が複数人並んでこちらの様子を眺めている。稀衣と社長はベッドの上に座っている。


稀衣 「何で。小学生なの?」

社長
「よく分からん。聞いてないの?(と言ってるが、社長も状況セッティングに関与しています)」


 稀衣は少女達の横に同席して立っていた男に強めの目線を送ったが、男は明らかに「このまま見られながらヤレ」という視線を返した。


社長 「うん。緊張するのも無理無いよ(優しい口調で)」


 と言いながら、稀衣をベッドに倒すように寝かせて…。


稀衣「(ううっ…)」


 社長は服の上から稀衣の体を触りながら


社長
「見せてもらったけど。稀衣ちゃんって、今までどういう人と付き合ってきた?彼氏と一体何してんの?付き合ってる相手とさ、ふつー…」


 外で見物していた少女の中にはトモカも居た。


トモカ 「アイドルの見学って…」

教育係のヤクザ 「あいつは上から落ちてきたやつだろ?トモカ見た事ない?」

トモカ 「うん。知ってるけど」

教育係のヤクザ 「お前はこれから昇っていけや。…じゃ、俺、ここら辺で席を外す事になってるから」

 

 男は少女達を置いて部屋から出ていった。


稀衣「あの、外で見ている子供、ホント無理なんですけど」

社長
「恥ずかしい?気にしなければいいんじゃないか?彼としてた事よりも恥ずかしい?」


 と、その時だった。ガラスの外の少女達は、一斉に、(指示されていた通り)稀衣のアイドルユニットの代表的ヒット曲の振り付けを踊り出した。


稀衣「…」

社長 「付き合ってきた女と、あんな事したかな?俺」

稀衣 「(ううっ)」

社長
「おじいちゃん大好きって言ってみ。よっぽどアレばら撒かれたくないんだろう。常識的にトップアイドルがさ。こんなジジイとヤルか?天秤にかけてやることにしたんだろ?今日。そういう打算的な女なの、お前は」

稀衣
「(ああ…アレばら撒かれてる所を想像して気が触れそう。ファンの皆んなお願い、許して。男を見る目が無かった。私失敗した)」

社長
「恥ずかしい女だなぁ。アホ親の顔見せろや。親がホント頭悪いんだろうな、つくづく…。ちょっと、ちゃんと見なさいよ。君のやつ踊ってるぞ」

稀衣 「…」

社長
「君は心のどこかで、いつかスケコマシにひっかかりたかったんじゃないのか?お前は心の中で、ばら撒かれたら他のメンバーにも大迷惑がかかるし事務所にも当然そう。自分で何とかお蔵入りにして欲しいって、思っているな?違うか。自分に言い訳してんじゃねーぞッ、こいつゥ。いいかよく聞け。お前と結婚したい奴なんて、絶対この地上にもはやいねーんだよ。この世にな。汚ねーホームレスでもお前なんて、お・こ・と・わ・り・だ」


稀衣 「(何でこんな変態のSジジイの相手を…ううっ)」


視点をトモカ達側に。フリの中で、ガラス越しにさすトモカの指を捉えて、次シーンへ



警察庁の本田の絵

絵の構成は、海が手前正面側から見て、右側に(上下で。つまりポスターの右側に海の重力はかかっている感じ)配置されている。こちらへ目線を送り軽く笑いながら、左手を伸ばして海の中に(右側の海)に手を突っ込んでいるポスター。右手はズボンポケットに。





53 Monster Designer 2

 

警察庁のHさんこと本田さん
「ヤクザが、わかってるんだろーなぁ。こいつら容赦しねーぞ。崖から突き落とすぞ、この…って、なーんてね(笑)」

警察庁のSさんこと澤田さん 「そうそう。(行きつけの居酒屋で)(気持ち)分かる分かる」

警察庁の本田
「そんな事公安部の奴らに言ったって。いくらなんでも無理なの分かるでしょ?、徹底的に買春テープばら撒かれてさ。あいつら指詰めて連れてこいって言ったって、部下が言うこと聞いて動く訳ねーだろ?それくらい言わなくてもわかるよね?「どうしようか??」ってなるよ。いや対応を考えてない訳じゃないと自分で自分を信じてる。俺?俺はだからさ、警備局長だよ。超偉いんだよ」

警察庁の本田 「公安も俺の事…バカにしてんじゃねーぞ」


 VIP用児童買春店で

警察庁の本田
「当然、結構飽きてる。最初は上司に踏み絵をふまされたんだよ。誰が自分から積極的にだ、この。俺の事コケにしてんじゃねーだろな?…たまには中学生にしてみるかな。まあどっちみち飽きてるけど。どっかにトキメキをくれるアイドルいねーかなぁ?…」


 自宅マンションで

本田の妻 「そういえば勝間さんの奥さんがさ…」

警察庁の本田
「(ああ、勝間か。最近会ってねーな。あいつ同期なんだけど、東京の進学校出で、チクチク現役合格にさりげなく触れて俺の事落としてるんだよね。俺?俺は田舎から一浪で法学部に入ったんだよ。あいつも実は俺の事バカにしてんじゃねーの?入れねーよ普通。一浪でも。何か東京の進学校ってそういう感じなの?)」

本田の妻 「ねえ、悠太に勉強するように言ってよ」

警察庁の本田 「ああ」

警察庁の本田
「悠太。俺言っただろ?中学校の受験超重要だって。大学がかなり決まるって言っただろ?兄ちゃんみたいに私立になっちまうだろ?」

本田の妻 「別に私立でも医学部だしいいじゃない」

警察庁の本田
「学費が高いんだよ(学費が払えねー訳ねーだろ?、お前何?俺の事バカにしてるわけ?)。俺みたいに一番良い大学に入って警察庁に入りてーよな?悠太は」

息子の悠太 「あ、え…うん」

警察庁の本田
「(え?、何?それ。リアクション超微妙で薄いんだけど。ガキまで俺の事、バカにしてないよね?)」



 所変わって、芸能界。数年前の出来事


俳優系のスケコマシ(ヤクザの仲間)の多田章人(タダアキヒト 以下 多田)
「人から指図されて、本当に申し訳なかったんだけど、俺の役割というか仕事というかさ。断れないんだ。ゴメンね」

多田の彼女のトップアイドル伊藤稀衣(イトウマイ 以下 稀衣)
「え?…ちょっと言ってる意味マジで分かんないんだけど。金振り込めって…」

多田
「取り敢えず3千万用意させろって言われてて」

稀衣
「何ワケわかんない事言ってんだよ。…っ私達付き合ってるんだよね?ッお前も俳優だろ?仕事とか、」

多田
「金用意しないと、撮ったやつをファンサイトや雑誌に送りつけろって言われてるんだけど。俺も下っ端だから断れないんだ。マジでゴメンね。やりたくなかった」


 多田は、下品系のAVポルノ作品と見間違うような行為に勤しんでいる稀衣の写真を取り出して見せた。


稀衣
「ちょっと…(ワナワナ震えながら)待ってよ。ちょっと、まッ、私、そんな事されたら、アイドルも全部ダメになるんだけど。っていうか、表もう歩けなくなるんだけど」

多田
「いつまで金用意出来る?あと、絶対俺の事他で悪く言わないで。ビデオも回してたし。俺はそんな事出来ないけど、他のやつに殴られて電柱にぶつけた事にさせられるかもしれない」

稀衣
「(両手で顔を押さえて。ヒクヒク泣きながら。震えて)酷い。付き合ってたんだよね…」



… 数年後

ニュース 「俳優の多田章人が結婚。お相手は人気女優の佐伯セイラ」


佐伯セイラ
「悪く言う人も居たけど、結構良いやつだって。私には分かる。そういう良い所があるんだよ」

稀衣
「あいつ、あんな人気女優と。ダメ。ああ…ダメ、心底ヤクザだよそいつ。ダメッ結婚しちゃ。ああ、ゴメンね。教えてあげたいけど、怖くて言えない。ゴメンね…」



 所変わって警察庁、今現在。


警察庁の澤田 「しかし、この女ミソ足りてねーんじゃねーのか?バカだからレディースか何かだったの?」

警察庁の内藤
「まあ、な。のび太の友人にしてもらえなかったバカ杉って感じか。誰がどう見ても、あれはスケコマだろ?」

警察庁の澤田 「ちょっと(ウケて)それ、オモロイ。…女が我慢出来なくなる匂いみたいなのがあんのかな」

警察庁の内藤 「中学で匂いは変わると思う派閥だけどさ。俺は。真剣にね」

警察庁の澤田 「ロリの話してねーだろ?」

警察庁の本田 「おう、仕事熱心お疲れッ。あれ…、何これ。佐伯ちゃん?…じゃん。してるし。流れて来たの?」

警察庁の内藤 「貢物のやつよ」

警察庁の本田 「俺にも一枚焼いてちょうだい」

警察庁の澤田 「この後、キメますよ」

警察庁の本田 「けしからん。これって逮捕系罵りのやつ?俺、超佐伯セーラ好きなんだよね」

警察庁の本田
「世間で警察庁をぐちぐち批判されても、薬だと思うけど、これから逮捕に向かいます。無修正で見え過ぎで逮捕です。警備局の者です。とは言えんだろ?流石に」

警察庁の内藤 「俺は生粋のロリコンだけどくるわこれ。エロいな。20代で一番良いやつだろ?これ」

警察庁の澤田
「まあ、この女もバカというか、まさか結婚相手がチョクチョク撮って出してるとは思わんだろ?思わんし、普通する訳ねーよ、妻にそんな事。こいつクズの完成型だよね?」

警察庁の本田
「俺の推理だと、何か女に情を移さない”スケコマのプライド”みたいなさ。バカなりのこだわりみたいなのが、あるんでねーの?いや、100%クズなんだけどさ」

警察庁の内藤
「セイラはバカじゃなくて思わねーよ。金脅し取る訳じゃないしさ、俺らに立場良くするための貢物で出されてるなんて、思うわけねーって」


… (見ながら)

警察庁の本田 「薬やってんじゃねーぞぉ」

警察庁の内藤 「薬やってんじゃねーぞぉ」

警察庁の澤田 「薬やってんじゃねーぞぉ」

警察庁の澤田 「これは発禁だ。ダメダメ」


警察庁の本田
「(俺はキメる前の絡みが好きだけどね。「好き(ビデオ内容の会話に勝手に答えて)」…まあ、俺って子供抜かしたらそんなに女と付き合ってないんだけど、人数がさ。普通くらいかな。いや〜、こんな女の顔は見たことねーなぁ…。こんな顔するのか。嫉妬か?いや、まさか。こんなガキの下衆に…まさか。憧れの類の感情か?…佐伯は兎も角、こんな下衆に…)」


警察庁の本田
「ああ(ニヤ〜リ、と笑って)…そうか」

警察庁の本田
「この下衆の表情にちょっと後悔の匂いを感じたのかな。ウフフ。勝手にストーリー作っちゃってる?…」


 自宅マンションで

本田の妻 「お帰りなさい」

警察庁の本田
「(毎度撮る気もしねーよ…こいつもテキトーな顔して俺の事バカにしてんじゃねーのか?怠いなぁ、っつーか、警察庁でねーとこいつ俺と結婚しねーだろ?俺の事バカに…って、当たり前か。邪魔だ。DVD見るから邪魔だよ。っつーか漬物がしょっぱすぎなんだよ)」

 



52 小さな公園で語らう


 ほどんど誰も聴いていない館内のBGMは、人知れず来訪者に人生の意味を問いかけているようだ。

 

 絵画 題名『悪夢』


ユキ  「…」

ケイゴ 「何に悩まされたのかな?」


 夢と曲が後ろから、二人をその場から追い出す形となり…


ケイゴ 「…ここはもう出ようか」


 二人、美術館から出て歩いて駅の繁華街の方向へ戻る。PM6:00辺り。


ケイゴ 「さっきの企画展結構夜遅くまでやってるんだな。かなり良かったよね?」

ユキ  「うん、そうだね」

ケイゴ 「三守雫って知ってた?」

ユキ  「全然知らなかった」


 路中、小規模な公園が在り何の気無しに立ち寄った。

 二人公園内へ進む。


ケイゴ 「先週さ、映画を観たんだよ。映画館で」

ユキ  「へぇ〜、どんなの?」

ケイゴ 「濡れて無いよな。そこ座りなよ」

 

 ケイゴはユキにブランコに座るように言った。

 ユキはブランコへ腰を掛ける。


ケイゴ
「恋愛モノだったんだけど、タイトルは…。底辺の主人公が言われた『人生は一度キリだから精一杯生きろ』っていう台詞があったんだけど、それが心に刺さってさ」

ユキ  「えっ?」

ケイゴ 「えっ?どうしたの?」

ユキ  「ううん。良い台詞だね」

ケイゴ 「俺は過ぎちゃったけどユキは青春だろ?」

ユキ  「青春って、まあ…」

ケイゴ 「人生と言えば青春でしょ?」

ユキ  「確かにそう言われるとね」

ケイゴ 「季節で言えば夏かな。青春だけど、イメージ的に夏寄りじゃない?」

ユキ  「うん。中には高校生ぐらいって思う人も居るよ」

ケイゴ 「いや、一日で言うと日中の昼の暑い、日差しが強い時間帯だよ」

ユキ  「ケイゴも過ぎてないって。何?そういう時があったの?」


 ケイゴは問いに答えずに言葉を続けた。


ケイゴ 「昼は当然今みたいな薄暗くなって来た時間に繋がっている。これから夜になって暗くなる前の」

ユキ  「…」

ケイゴ 「自分はこの時間帯が一番好きというか、綺麗だと思うんだよね」

ユキ  「言ってる事分かる気がするな」

ケイゴ
「灯りの映え方が綺麗だよ。暗くなってしまう前の、暑い時間帯を過ごした二人にしか見えない景色があると思わない?」

ユキ  「ロマンチックで上手い事言うね」

ケイゴ 「チュ〜ッ…」


 ケイゴは大袈裟に口をすぼめながら、ユキのブランコを掴み前後に揺すり勢いをつけた。


ユキ  「ちょっと、キャー、何々」

ケイゴ 「(ブランコの行ったり来たりを狙って)、チュ〜」

ユキ  「え、何でチューなの?」

ケイゴ 「動かないでチューしてくれって言っただろ?チュ〜」


 ケイゴはふざけながら行っては戻って来るユキを待ち構えていた。


ユキ  「ちょっと、ダメ、やめて(ブランコがケイゴの位置へ戻っていく)」

ケイゴ 「チュ〜」





51 先日の映画館で

 

 分不相応な女の夢を見た翌日に、

 ほとんど誰も居ない映画館で、

 少し飽きてスクリーンから腕時計の文字盤に視界を落とした。

 暗闇の中、円型のガラス面にはおいてけぼりにされたシーンが次々と映し出される。

 連れて時の刻印が波打つ。その際へと迷い込むように、

 誰かの愛から遠ざかっていった足跡は海へと続いていた。

 先には女が立っていたが、詩は浮かばなかった。

 その場所で君を見ているような気がするのは、どうしてなのか。